皆さんこんにちは!京都大好きライター、沢本ゆきです!
厳しかった暑さもやわらぎ、ようやくほっとする季節になってきましたね。夏の間、レジャーを楽しんだ皆さん!お疲れがたまっていませんか?疲れた体を癒すために、温泉にでも入ってのんびりしたいところですね。京都にはほっこりできる温泉地もたくさんありますが、今回は広い海とゆたかな緑に囲まれた温泉のまち、丹後由良に残る、ちょっと切ない伝説のお話をしたいと思います。
丹後地方にはロマンを秘めた多くの伝説が残っています。その伝説のなかでも『安寿(あんじゅ)と厨子王(ずしおう)』の悲話は、森鴎外の『山椒大夫』でも知られる物語です。
『山椒大夫』は、とある国の領主を父に持つ、安寿姫と厨子王姉弟の物語。平安時代、安寿と厨子王の父は、平将門の乱に荷担した疑惑をかけられ、筑紫の国へ追放されてしまいます。その父を追って筑紫へ向かう途中、人買いに騙され親子離れ離れになった幼い姉弟が、丹後国の山椒大夫に売られ、昼夜問わずの苦役を強いられることになります。
その時、安寿姫が1日3荷の水を汲んだと言われているのが由良海岸の『汐汲浜』です。近くには、『山椒大夫』の一説を刻んだ森鴎外文学碑が立っています。安寿は、何とか弟の厨子王だけでも助けたいと、山椒大夫の目を盗んで厨子王を逃がすことに成功しました。都に逃れた厨子王は立派に成人し、丹後王主となり悪人の山椒大夫を成敗したというお話です。
安寿姫の弟を思う気持ち…兄弟がいる私も他人事とは思えません。弟って、無条件に守ってやらなきゃという気持ちになるんですよね。歳が離れていたりすると余計に。大抵の弟は、大人になったら姉の事なんか見向きもしませんが、厨子王は見事に姉の仇を討った訳です。
うちの弟に爪のアカを煎じて飲ませてやりたい……。
…と、ここだけ聞くとめでたしめでたしの良い話。どこが切ないかというと、実はこの話には後日談があるんです。
なんとか山椒太夫の魔の手を逃れた安寿姫がその後どうなったかというと、都へ逃げる途中、疲労と空腹に耐えかねて、由良川のほとりで息絶えたと伝えられているんです。なんと悲しい結末……。
その亡骸は建部山のふもとにひっそりと葬られ、『安寿姫塚』として小さな祠にまつられています。そして、4月頃になると建部山は、安寿姫の化身と言われているニオイコブシの花で白く染まるのです。
ちなみに、中国の古典『項羽と劉邦』では、虞美人が自決した時の血からヒナゲシ(虞美人草)の花が咲きますし、ギリシャ神話では美しい青年アドニスの流した血からアネモネの花が咲きます。
古今東西、やっぱり花は美しく儚く、切ない物語の代名詞なのですね。
丹後由良やその付近の天橋立周辺には源泉が湧いていて、温泉宿もたくさんあります!
おいしい食材もどんどん登場する季節なので、しっぽりと秋冬の丹後を楽しんではいかがでしょうか?