300年以上前の江戸時代から、伊根町に守り継がれる「伊根祭(いねまつり)」。京都・八坂神社から牛頭天王を勧請したと伝わる地元・八坂神社の祭礼で、海上安全、大漁、五穀豊穣を祈願して、毎年7月末の土日に行われています。
実はこの伊根祭、“海の祇園祭(ぎおんまつり)”とも呼ばれているのです。
丹後半島の先端に位置する伊根町は、海上に浮かんで見える住居「舟屋(ふなや)」が並ぶ独特の風景で知られています。この町に暮らす漁師たちは、古くから住まいの一階に漁船を停泊させてきました。一年を通じて、穏やかで潮の満ち引きも少ない伊根湾沿いにあるからこそ、この趣ある景色がつくりだされているのです。
そんな伊根町で行われる伊根祭の特色は、大漁の年に出る4艘の船屋台。7艘を横に繋いだ土台の上に屋台を組み上げるのですが、祇園祭の山鉾と同じく釘は一本も使用されていません。船屋台が海上渡御(かいじょうとぎょ)するさまが、京都・祇園祭の山が海に浮いているように見えることから“海の祇園祭”と呼ばれています。
また陸上では、子どもたちによる可愛い神輿渡御の光景も見られます。
2017年、船屋台は見られなかったものの、傘鉾を乗せた「祭礼船(さいれいせん)」と「神楽船(かぐらせん)」が亀島から八坂神社・宮の浜へと渡御しました。海上でも神楽船では奉納演奏が披露されます。
宮の浜へ降り立った人々は、山上にある八坂神社へ。女子生徒らが奏でるお囃子が鳴り響く境内で、小学生中学生による棒振り、神楽が奉納されます。一行はその後、八幡神社、そして伊根湾と外海との出入り口に浮かぶ青島の蛭子神社へと向かい、二日間に渡る祭礼は幕を閉じます。海上安全と大漁への祈願、そして穏やかな海への感謝を捧げながら…。
千年の都・京都の祭礼・祇園祭は、遠く離れた伊根の地でかたちを変え、地元独自のお祭りとして伝えられてきました。全国の漁師町の現状と違わず、人口減少と漁の後継者難に苦しむ伊根町。それでも一年に一度お祭り時期になると、人々は寄り合う大切さを再認識し、郷土愛を育みます。海は、そうした人々の営みを太古の昔から見つめ続けてきたのです。
この内容は、8月10日(木)にKBS京都「おやかまっさん」(10:30~11:55)で放送されました。
後日YouTubeにもアップ予定ですのでお楽しみに!