京都府北部、若狭湾に面した宮津市は古くから日本海沿岸の交易拠点として栄えてきました。宮津湾に伸びる天橋立の景観は日本三景のひとつに数えられています。今回取り上げるのは、天橋立を眼下に望む山の中腹にある成相寺(なりあいじ)にまつわる話題です。
8世紀初めに創建されたと伝わる成相寺(なりあいじ)。西国三十三所の第二十八番札所として、地元のみならず全国から多くの参詣者が訪れます。その成相寺へと続く参道が、このたび地元宮津市の有志らによって新たに整備されました。府中地区から成相寺へと続く修験の道「本坂」。整備にかかわった成相本坂道を守り伝える実行委員会の日下部さんに案内していただくと、参詣道にはお地蔵様や、昔、丁石と呼ばれていた石標が見られます。さらに、途中にある休憩所からは、天橋立の美しい景観がひろがっていました。
日下部さんらはこの参詣道を改めて整備できないかと、2017年2月頃から地域の方々とともに検討してきたそうです。行政や関係諸団体の方とも協議を重ねて、整備が本格化したのは夏頃。そして11月5日にイベントを開催し、整備された参道をお披露目しました。
昔の人たちは、どのような経路で成相寺を参詣したのでしょうか。まちの未来創造委員会の関野祐さんに伺うと、それは大きくふたつ。ひとつは船で天橋立を渡り、参詣道下の浜に船を着けてそこからは山を登るルート。もうひとつは、丹後の奥にある京丹後方面や京都市内から、陸路で成相寺をめざす経路です。「1689年に儒学者である貝原益軒が書いた旅の日記に、天橋立が日本三景であると初めて記されました。この参詣道が、天橋立が日本三景に数えられるきっかけとなった場所であることも、もっと知ってもらいたい」と、関野さんは話します。天に架かる橋のように見えることから名付けられた天橋立。それはまた、海上に浮かぶ参詣道としての役割も果たしてきたのです。
20年ほど前に一度整備されたものの、その後台風による倒木などで荒れた状態になっていた参詣道。整備事業は、古くから多くの人が祈りを捧げてきた成相寺をこれからも守っていこうとする地元の熱意によって実現しました。それほど険しい山道ではありませんので、成相寺に行かれる際は天橋立の眺望を楽しみつつハイキング気分で歩いてみてはいかがでしょう。
この内容は、12月21日(木)にKBS京都「おやかまっさん」(11:00~11:55)で放送されました。