毎年8月16日に舞鶴市で行われている「吉原の万灯籠(まんどろ)」ですが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大の状況を踏まえ、中止となりました。
8月16日といえば、京の夏を代表する行事「五山の送り火」が行われる日。この日宮津市では、日本三大燈籠流しの一つ、「宮津燈籠流し花火大会(みやづとうろうながしはなびたいかい)」が行われます。どちらもご先祖の霊・精霊をお送りするお盆の行事です。
同じ日だから吉原の万灯籠もご先祖の霊をお送りする行事??と思われるかもしれませんが、実は違います。では吉原の万灯籠とはいったいどういう行事なのでしょうか。
吉原の万灯籠が行われる舞鶴市の吉原は、昔ながらの漁師町の風情が残る街。舞鶴市の北端に位置し、街には水路が引かれていて船が出入りできるようになっています。そのため、”東洋のベネチア”とも例えられ、レトロな雰囲気を味わうことができる地区としても人気があります。
そんな漁師町で行われる「吉原の万灯籠」。同じ日に行われる「五山の送り火」や「宮津燈籠流し花火大会」はご先祖の霊・精霊をお送りするお盆の行事ですが、「吉原の万灯籠」は漁業の盛んな漁師町ならではの行事です。
文献などの記録はありませんが、クラゲの大発生で漁に出られない漁師が海神の怒りを鎮めるため、大火を海でたいたのが行事の始まりと言い伝えられてるそう。海への信仰心と地元の愛宕信仰が結びついたもので、豊漁や海上安全への祈り、魚の鎮魂などのために行われてきたそうで、海と密接なつながりを持った行事です。
毎年8月16日の夜、愛宕権現を祭る円隆寺から御神火を授かった青年たちが太鼓の音色に合わせてかけ声をあげながら、高さ約15メートルの魚型の灯籠を抱えて舞鶴湾に流れ込む伊佐津川の河口に向かい、川の中へ入っていきます。川の中では、水かけ役や棒を押す役に分かれた人々が火の粉を浴びながら灯籠を回転させ、その際に火が真夏の夜空を彩り、美しい情景を描き出します。
残念ながら今年はこの様子を見ることができませんが、来年以降また見られるようになるといいですね。