天橋立は、自然が生み出した奇跡の造形美であり、神話や歴史に彩られた文化的背景を持つ景勝地です。四季折々の表情を楽しめるだけでなく、展望所ごとに異なる姿を見せるため、訪れるたびに新しい魅力を発見できます。
このような天橋立ですが、松枯れ・倒木・土壌の富栄養化・ゴミ問題と多岐にわたる環境問題を抱えています。
環境問題を紹介することで、私たちにできることは何か。景観と自然を守り続け、美しい天橋立を未来へつなぐために、一緒に考えてみましょう。
天橋立の松並木を脅かす大きな要因のひとつが 松枯れです。
病原体は マツノザイセンチュウ で、これが松の内部に侵入すると水分や養分の通り道を塞ぎ、木を急速に枯らしてしまいます。
センチュウは マツノマダラカミキリに寄生しており、カミキリが若い松の樹皮を食べる際に松の中へ入り込みます。
この被害を防ぐため、地域では ラジコンヘリによる薬剤散布などの防除対策が行われています。
台風による倒木と土壌の富栄養化
平成16年の台風23号では、天橋立で 約200本もの松が倒木したと記録されています。
天橋立はもともと地下水位が高く、松が深く根を張りにくい環境にあります。そのため、根の浅い松が増え、強風にさらされると倒れやすくなってしまいます。
さらに現在の土壌は 栄養過多の状態にあり、松がしっかりと根を張らないまま幹だけが高く育つ傾向があります。
かつて松は、落ち葉や落ち枝が燃料として利用され、特に松ヤニを多く含む松は高温を生み出すため製鉄にも活用されていました。こうした人々の利用によって、松林では腐植土が過剰に積み重なることが抑えられていたのです。
しかし、時代が進み化石燃料が主流になると、人と松とのかかわりは減少しました。その結果、松林の環境は変化し、広葉樹林への遷移が始まりました。光環境が悪化し、下草が増えることで松は根を十分に張らず、幹だけが高く育つ傾向が強まり、倒木のリスクが一層高まっています。
松枯れや倒木、土壌の富栄養化といった問題は、専門的な知識や長期的な対策が必要であり、私たちだけで簡単に解決できるものではありません。
しかし、環境を守るための清掃活動は誰もが身近に取り組める大切な行動です。小さな一歩でも、天橋立の美しい景観を未来へつなぐ力になります。
迎春天橋立一斉清掃が、新年を迎えるにあたり実施されます。1人が1坪清掃すれば天橋立が美しくなるということで始まった清掃活動。
この清掃活動に参加して、ぜひとも天橋立の環境問題を考えるきっかけにしてください。
日時:令和7年12月14日(日) 午前8時30分~午前10時
受付:文珠側…小天橋 府中側…船越
*ゴミ袋をお渡しします
※清掃終了後、学芸員が案内する一斉清掃アフターウォークが実施されます。
併せてのご参加をお待ちいたしております。