山陰海岸ジオパークは、京丹後市(京都府)、豊岡市・香美町・新温泉町(兵庫県)、岩美町・鳥取市(鳥取県)の3府県6市町にまたがる、東西約120kmに及ぶ広大なエリアです。
日本海形成の歴史を物語る地形・地質が連続し、世界的にも貴重な自然遺産が数多く残されています。
その中でも京丹後は、広がる砂丘、個性的な奇岩、切り立つ絶壁、そして海食洞が連なる“地形の博物館”のような場所。
日本海の荒波と地殻変動が長い年月をかけて大地を削り、積み重ね、彫刻してきた結果、ここには他では出会えない多彩な景観が広がっています。
京丹後を丹後・網野(琴引浜・夕日ヶ浦)・久美浜とエリアを分けてそのエリアで見ることができる代表的な地質遺産をご紹介します。
海の幸を楽しむ旅とはひと味違う、もうひとつの“京都の海”の魅力を探しに、京丹後へ足を延ばしてみませんか。
海中からそびえ立つ、黒々とした安山岩の巨大な奇岩。その迫力と美しさから、景観スポットとしても知られる代表的な地質遺産です。
この巨岩は、約1,500万年前に地下から噴き上がったマグマが冷えて固まってできたものといわれています。砂州から近づいて実際に触れることもでき、垂直に伸びる柱状節理を間近で観察できます。海底火山の活動や海面・地形の変化、そして波や風雨による浸食の歴史を感じながら眺めると、太古から続く地質変動のロマンが胸に広がります。
また、この岩には「鬼を閉じ込めた」という伝説が残されており、強風や高波の日には鬼の声が聞こえると語り継がれています。荒々しい自然と結びついたこの物語は、立岩に独特の神秘性を与えています。
立岩は季節や天候、そして夕景や夜景によってまったく違う表情を見せます。光や影が刻々と変わる姿は、訪れる人に深い感動を与えてくれるでしょう。
そして、近くには、立岩を見守るように立つ「間人皇后・聖徳太子母子像」があります。騒乱の中、この地に身を寄せていた間人(はしうど)皇后は、大和へ戻る際、手厚くもてなしてくれた村人への感謝として「間人」の名を贈りました。しかし村人たちは「はしうど」と呼ぶのは恐れ多いと考え、「たいざ」と読むようになったと伝えられています。
母子像の背後に広がる山並み、そびえ立つ立岩、そして空と海が織りなす荘厳で幻想的な景観を、ぜひその場で味わってください。
屏風岩
海面からまっすぐ立ち上がる姿が屏風のように見えることから、この岩は「屏風岩」と呼ばれています。柔らかい凝灰岩の地層にマグマが貫入し、周囲の柔らかい地層だけが波によって浸食され、硬い部分だけが取り残されて現在の形になりました。いくつもの岩が一直線に並ぶ独特の景観が特徴です。
青い海から突き出た姿はもちろん、夕暮れ時に赤く染まる海とのコントラストも美しく、訪れる人を楽しませてくれます。国道178号線沿いには展望スポットがあり、数台分の駐車スペースも整備されています。車を停めて、ゆっくりと屏風岩の造形美を観察してみましょう。
丹後松島
丹後松島は、日本海の荒波が長い年月をかけてつくり上げた名勝地の代表格です。海に浮かぶ大小の岩々と、その上に生い茂る松の姿が日本三景・松島を思わせることから、この名で呼ばれています。日本海の厳しい波が岩肌を削り、硬さの異なる地層が選択的に浸食されることで、まるで自然が造った庭園のような景観が生まれました。
犬ヶ岬トンネル入口付近の国道178号沿いには、犬ヶ岬園地(駐車場・展望台を備えた休憩所)が整備されており、道路越しに丹後松島の全景を望むことができます。また、犬ヶ岬遊歩道を進むと、海岸線に露出した波食の進んだ岩肌を間近で観察でき、丹後の海岸地質を体感できるスポットとして人気があります。
袖志の棚田
日本海を望む急斜面を巧みに利用し、扇状地には約400枚もの棚田が広がっています。この棚田は、約10〜12万年前に形成された海食台地が、その後の地殻変動による隆起と海面低下によって陸化したことで生まれた地形を基盤としています。山側には、かつて波が打ち寄せていた痕跡や海食崖の名残が見られ、当時の海岸線の位置を今に伝えています。
海と集落、そして棚田が折り重なるように調和した景観は、初めて訪れた人にもどこか懐かしさを感じさせます。秋には刈り取られた稲が「稲木(いなき)」に掛けられ、天日干しされる光景が広がります。この伝統的な作業風景は、現在では全国的にも貴重なものとなっており、棚田の文化的価値をより一層引き立てています。